新国立競技場の建設現場で働いていた東京都内にある建設会社の男性新入社員がことし3月に自殺しました。労働基準監督署は、この問題に対して、違法な長時間での仕事をさせていたとして男性が働いていた都内の建設会社に是正勧告を行ったことが分かりました。また、元請けの大成建設に対して、労働者の健康な労働環境を整えるよう行政指導しました。
遺族の弁護士によると、男性は去年4月、大成建設という都内の建設会社で働き始め、12月から同競技場の地盤改良工事で施工管理を担当していました。男性は3月に行方不明になり、4月に長野県内で遺体で発見されました。死因は自殺だとみられており、自殺する前の1か月の残業時間が200時間以上に上っていたほか、現場の工事を予定通りに終わらせようと精神的に追い詰められた結果自殺したということです。遺族は過重労働が自殺を引き起こした原因だと考えて、7月に労災を申請しました。
これを受けて厚生労働省は、新国立競技場の建設にかかわる約800社に対して、労働時間の調査を行いました。その結果、男性が働いていた建設会社は、多くの従業員に違法な長時間労働をさせていたことが明らかになったため、労働基準監督署は28日、この会社に対して是正勧告を行いました。
また、調査の結果、この男性が働いていた建設会社だけではなく、別の複数の企業でも違法な長時間労働などの違反が見つかったということです。労働基準監督署は元請けの大成建設が管理する新国立競技場の工事現場にある事業所に対して、労働者の健康を確保するよう行政指導にあたる「指導票」と呼ばれる文書を交付しました。
勧告を受けた企業は、是正勧告を受けた建設会社はまじめに受け止め、是正勧告を受けることが二度と起こらないよう対策を立てていくと話しています。
読売新聞の取材に、同社は担当者が不在で詳しいことがわからないと話したほか、大成建設広報室は現時点で言えることはないと答えました。