スウェーデン・アカデミーは5日、2017年のノーベル文学賞を、長崎生まれの日系英国人で世界的なベストセラー作家のカズオ・イシグロさんに授与すると発表しました。
日本時間の5日午後8時すぎ、スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞選考委員会は、ことしのノーベル文学賞の受賞者にカズオ・イシグロ氏を選んだと発表しました。
受賞者のイシグロ氏は1954年に長崎で生まれた62歳の日系イギリス人です。海洋学者である父親の仕事の都合で、5歳のとき家族と一緒にイギリスに移り住み、その後イギリス国籍を取得しました。
日本を舞台とするイシグロ氏の作品には、イシグロ氏が子供のころに住んでいた長崎の風景のほか、小津安二郎や成瀬巳喜男らによる、50年代の日本映画をもとに作り上げられた日本の様子が見られます。
イシグロ氏は1989年に「日の名残り」という、第2次世界大戦後のイギリスの田園地帯にある邸宅で働く執事の回想を題材にした失われつつあるイギリスの伝統を描き出す作品で、英語圏で最高の文学賞と言われているブッカー賞を受賞しました。
さらに、2005年に発表された「わたしを離さないで」という臓器移植の提供者をテーマにした作品は、2010年に映画化され、その映画は日本でも公開されていました。
イシグロ氏を選んだ理由について、ノーベル文学賞の選考委員会は、イシグロ氏の小説が、私達が世界とつながっているという感覚は非現実的なものでしかないという、深い穴をあきらかにしたことを挙げています。
ノーベル文学賞の授賞式は12月10日にスウェーデンのストックホルムで開催される予定で、イシグロ氏には900万スウェーデンクローナ(約1億2400万円)が賞金として手渡されることになっています。